子どもと自然学会設立宣言

  私たちはここに「子どもと自然学会」の設立を宣言する。
 子どもにとって自然は、その事実や性質を学ぶ客観的対象であるばかりでなく、子どもの健康と体力の増進、豊かな情操と美的感覚、及び、言語や数量的計算の発達にとって欠くことのできない存在であり、また、自然における遊びや活動が子どもにとって仲間との協力や共同、人間関係の構築を体験し理解させる機会にもなっていることが、子どもの発達に関する研究では、そのはじめから強調されてきた。
 しかし、現実には社会の急激な変化によって、子どもの発達に必要な自然がその周りから次第に姿を消し、子どもと自然の関係にも様々なゆがみが生み出され、子どもの生活にさまざまな問題を引きおこす大きな要因の一つになっている。また、教育・地域・家族等の人間関係が必ずしも有効に機能しているとはいえず、子どもが自然と豊かにかかわる上で困難が生じていることも否定できない。
 子どもの発達に必要な自然の回復や、新しい状況に応じた子どもと自然の関係の研究は緊急の課題になっている。本学会はこうした子どもをめぐる深刻な状況を認識し、その解決のための研究が緊急の課題であるとする共通の意識をもつ人々によって、すべての子どもの幸せを願って設立されたものである。
 従って、本学会の扱うべき研究が広範・多岐にわたるであろうことはいうまでもないし、自然・社会・人文の各分野の科学者・教育者や芸術家など多方面にわたる専門家だけでなく、子どもの発達に関心を持つ多くの人たちの参加があってはじめて可能なことはいうまでもない。今後の活動の中で本学会設立の意義をより多くの人々に理解していただき、そうした各分野から一人でも多くの会員を迎え入れることは本学会の大きな課題の一つである。
 すでに、本学会はその準備段階から紀要の発行等を行ってはきたが、本日ここに学会設立を迎えたことは自然と子どもの関係に関する研究に新たな段階を迎えたことを意味し、その意義はきわめて大きいと言わなければならない。これを機会に私たちは多様な研究活動を積極的に展開し、研究会その他の多様な学会行事の開催や、学会誌の発行等を行い、本学会の活動の質と量の一層の強化をはかるよう努力しなければならないと考えている。
6年間の研究成果の評価によってその後の会の存続を検討することが規約には定められているが、これは本学会の研究活動と自己評価に対する他には見られない厳しい姿勢を示したものである。
 本学会の設立が子どもの幸せと福祉の向上に必ず寄与するであろうことを確信し、子どもと自然に関心をもつ人たちが一人でも多く本学会へご入会くださるよう呼びかけるとともに、子どもの発達や認識、自然の研究に関係する諸学会や研究会、その他の関係団体とも協力・共同の関係が発展できることを本学会の設立にあたって希望するものである。


2003年11月30日
子どもと自然学会設立大会